建設業では重層下請構造の中で、就労形態が雇用関係でなく労務請負として就労している場合があり、労働者と同じように現場で働いても労働基準法の適用を受けることが出来ない場合が多々あります。このため、働く者の被用者保険に加入する事ができません。私たちは建設国保を運営することで、建設業に適した健康保険を提供しています。
工場や鉱山などで働く労働者を対象とした健康保険法は1922年(大正11年)に制定されました。また、国民健康保険は地域住民を対象とする普通国保組合と同業組合の特別国保組合として整備がはじまり、1938年(昭和13年)に同業組合の国保組合が一部の業種で誕生しました。しかし、これらの保険制度は戦争の激化で整備が頓挫していました。
戦後、国民皆保険を目指して1958年(昭和33年)に国民健康保険法が改正され、これによって全ての市町村に市町村国保が普及し、国民皆保険が達成されたのは1961年(昭和36年)の事でした。
こうした状況の中、建設業で働く労働者たちも「過酷な労働環境で働く建設労働者が安心して病院に行ける健康保険制度を確立させよう」と切望し、そして運動を行います。1953年(昭和28年)には日雇健康保険法が成立します。しかし、大工・左官等の職人や一人親方は『雇われていない』という理由で、成立当初は法の適用を受けることが出来ませんでした。さらなる運動の結果、擬制適用が認められ、この時ようやく建設労働者の命を守る健康保険制度が結実します。しかし、1970年(昭和45年)には日雇健康保険は廃止となりました。
現制度(建設国保)は、日雇健康保険の廃止等、様々な困難・危機を「建設労働者の命を守るために」と、労働組合に結集した建設労働者の努力によって設立されています。
組合の建設国保は、同業の人々で組織され、地域的なまとまりや仲間意識から『自分たちの保険を守ろう』という強い意識のもとに運営されています。
建設労働者の過酷な労働環境を踏まえて、じん肺やアスベスト健診等、建設業特有の職業病の早期発見・早期治療にも努めています。
これからも組合では、制度の安定と向上を目指し、未納者への注意・督促をはじめ、労災事故・第三者行為・交通事故等の紛れ込み防止、医療費の節約等、さらなる保険制度の向上を目指していきます。
組合の健康保険に加入出来る方は、建設関係の仕事に従事し、一人親方又は従業員が5人未満の個人事業所の事業主とその従業員です。加入する場合は、建設業で働いている証明(職種を証明する物)等の提出を含め、厳格な資格確認が行われます。